B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

ゲルハルト・リヒター展|国立近代美術館

「美術作品は難しく考えず、自由に鑑賞しましょう」という言葉に騙されてはいけません。特に、ゲルハルト・リヒターにおいては。

リヒター作品を目の前にして、難しく考えないなんてことができるでしょうか、はい、できません!

ゲルハルト・リヒターをひとことで言うとこんな人(Wikipedia)↓

ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932年2月9日 - )は、ドイツの画家。現在、世界で最も注目を浴びる重要な芸術家のひとりであり、若者にも人気があり、「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれている。

アブストラクト・ペインティング」とか「フォトペインティング」とか「アトラス」とか、有名な作品シリーズがいくつかあるのですが、それらは絵画や写真やガラスや、様々な手法で作られているんですよ。

大きな作品も多くて、迫力あるなぁっとは思うんですが、何を表現しているのか?と考えると、なかなかどうして、分からない。

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所をモチーフにした『ビルケナウ』、9.11同時多発テロの後に描かれた『September』などは、タイトルから比較的イメージしやすいです。

でも「ただのガラス板」や、「灰色だけの絵」にいたっては、うーん、となってしまいます。

どうしたって、この人はどういう人なのか、何を考えているのか、知る必要がありそうです。

リヒターを知るためにはデュシャンを知らなければいけないし、デュシャンを知るためにはそれまでの美術の流れを知らなければいけない。20代頃に出会って影響を受けたという抽象表現主義も避けて通れません。

もちろん、旧東ドイツ出身のリヒターにとってのホロコースト第二次世界大戦、また現代まで続く争いの歴史、などなど、多くの要素があのような作品につながっているのだから、そりゃ、難しいわけです。

リヒター作品のキーワードとして「シャイン(光、仮象)」という言葉がよく出てきます。そう言われると、鑑賞者を写すガラスの板、写真に重ねて描かれた絵、いくつもの色の集まり、なんとなく意図が見えてくるような気もします。少しだけ。

実在すると思っているかもしれないけど、それって、オマエの頭の中にあるイメージに過ぎないんだよ。そんな問いかけが聞こえてきそうで、心がザワザワしてきます。

 

【写真:ビルケナウ(937-3)2014年 キャンバスに油彩 260 x 200cm】