B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

ジョルジュ・ルオー ―かたち、色、ハーモニー―|パナソニック汐留美術館

パナソニック留美術館が開館20周年を迎えました。それを記念した展覧会の第一弾としてジョルジュ・ルオー(1871-1958)の回顧展が開催中です。

同館が有するコレクションに加え、国内外から代表作が集結。ルオーを見て少しばかり厳かな気分に浸る週末。

セザンヌ、拒絶され狂ったように激昂し、気むずかしく猜疑心が強いのも理由がないわけではなく、生きている間はわずかな人にしか愛されなかった

これは、亡くなったセザンヌ(1839-1906)を讃えてルオーが書いた『孤独な男への賛歌』という詩の一部です。セザンヌにとっては結構な言われよう。ですが、ルオーは心底セザンヌを尊敬していたようです。セザンヌの水浴図に着想を得た『水浴の女たち』などの作品を描いたり、彼をオマージュした噴水を建設するプロジェクトのためにデザインを考案したりしています。やっぱり当時のセザンヌの(特に若い画家への)影響力は大きい。

もちろん、直接の師であるギュスターヴ・モロー(1826-1898)との絆も欠かせないエピソードです。モローがルオーに書いた手紙は愛情にあふれていました。褒め、自信を持たせ、的を射たアドバイスも忘れない。愛弟子へのお手本のような内容。尊敬する先生からこんな手紙をもらったら奮起するしかないでしょう。初期作品ではレオナルド・ダ・ヴィンチプッサンレンブラントの影響も指摘されています。

ほかにも、同時代の芸術家とのつながりとして、美術雑誌『ヴェルヴ』が紹介されていました。ナチスによるパリ侵攻中に出版された第8号は「戦争号」といえる内容で、マティス、ボナール、ブラック、ミロなどと並んでルオーの作品も掲載されています。なんて豪華メンバー…。ちなみにこれに掲載されているマティスの『ラ・フランス』はひろしま美術館所蔵で、ただいま東京都美術館で開催中のマティス展(4月27日から8月20日)に出展されています。そっちかー。

大木のある風景(1946年頃)

ルオー作品の特徴として、マティエールと呼ばれる厚塗り技法が挙げられます。作品を高解像度撮影した映像から(パナソニックの技術かな?)、晩年の作品ほど厚塗りになっていることが分かります。様々な色の絵の具を重ねては削りまた重ねるという方法により、あの輝くような色彩が生まれたそうです。そのことは出口横に掲示された年表の「14歳でステンドグラス職人に徒弟奉公」という記述できっちり伏線回収ってことで良いのかな。

館内には「ルオー・ギャラリー」というコレクションを常時テーマ展示している一室があり、行くたびに楽しみにしています。絵から受ける印象から勝手に「孤高の画家」のイメージを持っていたのですが、今回のルオーの人物像にスポットを当てた展示により、新たな一面を知ることができました。