B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

今年見納め★ヴァロットン 白と黒展

フェリックス・ヴァロットン(1865~1925年)の木版画にスポットを当てた展覧会です。

タイトル通り、白と黒の世界。特に黒には強烈な印象を受けます。例えば『お金(アンティミテⅤ)』という作品。

画面の3分の2を占めるのは、漆黒。そこから浮かび上がる男性と、隣に立つ白いドレスの女性。ただし女性の目線は窓の外に向けられています。

intimité、親密、というシリーズは、男女の不穏な空気を表現した傑作です。黒の魅力ここに極まれり、と思えるほどで、当時の人たちはもちろん、いま見ても魅了されます。

『アンティミテ』は撮影不可でした。こちらでどうぞ。長期休館…悲しみ。

prtimes.jp

その他、パリ市民の様子を描いた作品も多彩です。暴動や貧困などが取り上げられていることも多く、当時のパリは騒然とした雰囲気だったのかな。

そのような闇の部分を取り上げていても、全体の雰囲気がお洒落なのは、デザインセンスのなせる技でしょうか。

フェリックス・ヴァロットン『学生たちのデモ行進(息づく街パリⅤ)』1893年

何の場面だろう?と思うのですが、タイトルを見るとドキッとする。

フェリックス・ヴァロットン『暗殺』1893年

ヴァロットンと同時代に活躍した、ロートレックの作品も紹介されています。

スイス出身の外国人だったヴァロットンと、貴族出身で社会に馴染みきれなかったロートレック。本展では両者を「パリの傍観者」と位置づけ、比較しています。

似たようなモチーフを取り上げていたり、同一人物がそれぞれの作品に登場していたり。同じナビ派ということもあり、意外と狭い世間だったのかもしれません。

ナビ派は浮世絵の影響も大きく受けています。にわか雨や突風のシーンは北斎かなぁと。

フェリックス・ヴァロットン『突風』1894年

三菱一号館美術館は、多くのヴァロットンの版画作品を所蔵しています。自慢のコレクションをまとめて見られるチャンス。

これで、2022年の展覧会は見納めです。