B面のつぶやき

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美しきシモネッタ|丸紅ギャラリー

日本で唯一の、ボッティチェリの、一枚だけの、展覧会です。

『美しきシモネッタ』は丸紅が1969年に1億5000万円で輸入。購入ではなく輸入なのは、国内で販売する予定だったから。

しかし結局、不景気のあおりを受けて買い手がつかず、自社で引き取ったそうです。ちゃんと引き取って偉い。

この展覧会の特徴は、作品の来歴や複数存在するシモネッタの肖像の構図の比較、エピソードなどを、資料やパネルを用いて詳しく解説している点です。

19世紀初めにイタリアで再発見され、その後フランス⇒イギリス⇒ドイツ⇒イギリスを経由し、日本にやってきました。

一時期はナチスの「略奪美術品」だったことも。絵に歴史あり。このように、来歴がはっきり分かるのは珍しいそうです。

1億円超えという、当時としては破格の値段、さらには贋作騒動まで持ち上がり、新聞記事になったりもしました。

もちろん調査の結果、現在は真作と認められています。その顛末も包み隠さず紹介していて偉い。こういう話はミステリーっぽくもあり面白いね。

メディチ家全盛の時代に実在したシモネッタは、フィレンツェで一番と讃えられるほどの美貌で、絵を見ても「お美しい…」の一言です。やや憂いを帯びたような雰囲気も魅力。ボッティチェリの超有名作、『春(ラ・プリマヴェーラ)』や『ヴィーナスの誕生』のモデルである説も納得です。

油絵より劣化が少ないテンペラ画ということもあり、色の鮮やかさが保たれています。これで500年以上前の作品なんですよね。

1枚だけの展覧会に500円。高いか安いか、人によって意見が分かれるかもしれません。個人的には必見です。

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