B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

芳幾・芳年展|三菱一号館美術館(しばしのお別れ)

思えば、最初に好きになった浮世絵師が歌川国芳(うたがわ くによし、1797~1861)です。

派手で勇壮な武者絵は見ているだけでワクワクするし、美人画に描かれた女性たちはお人形っぽさが無くて楽しそう。おまけに猫好きで猫の絵もかわいいときた。

今回の展覧会では、落合芳幾(おちあい よしいく、1833~1904)と月岡芳年(つきおか よしとし、1839~1892)の「国芳門下の2大ライバル」が、明治維新と浮世絵衰退をどのように乗り越えたのかを振り返ります。

正直、国芳、芳幾、芳年の区別がちょっと難しい絵もありました。ふたりとも師匠の教えをキッチリ守ってるというのか、私の目がナマクラっていうのか。

弟子のふたりを比べると、よりダイナミックで、より「血みどろ」なのが芳年と言われています。『芳年武者旡類』シリーズなんて、画面の隅々まで冴え渡っていて圧巻。国芳も「器用だが覇気のない芳幾、覇気はあるが不器用な芳年」と評しています。

とはいえ芳幾の絵の残酷さも相当だし(確かに血の量は少ないかもしれない)、師匠ゆずりの奇抜で面白い作品もたくさんあります。現在は芳年の評価が高まっていますが、当時は兄弟子である芳幾の方が人気者だったそう。

狂気じみたイメージすらある芳年ですが、『月百姿(つきひゃくのし)』シリーズは全体的に落ち着いたトーンで静謐感があり、淡いグラデーションがきっちり表現されています。晩年に辿り着いた境地なのかもしれない。

写真は『石山月』に描かれた紫式部石山寺といえば源氏物語、着物も紫だし間違いないですよね?青みがかった空、ほんのり明るい照明。この時代の木版画技術はホント神…。100作品すべて見てみたい。

芳幾といえば『東京日日新聞』の挿絵を手掛けたことで有名です。当時のゴシップ記事的な内容で、ヘンテコリンなニュースも気になっちゃいました。くずし字がスラスラ読めればもっと楽しめるんですが…。

火事の際、当時貴重だった電柱への延焼を防ぐため、近くの家を壊した巡業中の力士のお手柄。家<電柱なのか…。

この展覧会終了後、三菱一号館美術館は長期休館に入ってしまいます。大好きな美術館なので悲しい…。来年の秋のリニューアルオープンがもうすでに待ち遠しい。

なんと。↓kindleでありました。