B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

ダムタイプ 2022:remap|アーティゾン美術館

不安だったのは「果たして楽しめるのか」ということ。ダムタイプとかって、感度が高くないと楽しめないんじゃない?という先入観がありました。

ダムタイプは結成から約40年、日本を代表するメディアアーティストなんて呼ばれている凄い人たち。自分のようなほぼ「一見の客」には優しくないのかもしれない、なんて思っていました。しかし今年は現代アートに積極的に歩み寄る所存。2022年ベネチア・ビエンナーレを再構成した展示を発表すると知り、行ってみようという気になったわけです。

展示空間は照明が落とされ、四方の壁に沿ってターンテーブルが置かれています。レコードには世界各地の地名が記され、そこで録音された音だということがわかります。TOKYOと書かれたレコードには渋谷駅ホームのアナウンスが録音されていました。

さらに、それぞれのターンテーブルの配置が東京を起点とした実際の方位に従っていることに気が付くと、ここは小さな地球、というイメージが湧いてきます。そういえば、レコードが回っている地域は昼、止まっている地域は夜を表しているようでもあります。

ターンテーブルに囲まれた空間の中ほどは文字や光線が明滅するゾーン。天井から床に向かって水平に設置されたモニターには地図や星空などを思わせるイメージが映し出され、回転する鏡の柱や床面のミラー、超指向性スピーカーから聞こえるささやき声などの効果で不思議な浮遊感です。それぞれまったく無関係か思うと、思わぬ共鳴が生まれたり。距離や国境を越えた人々の営みを想いました。

通路を渡った先にはもう一つの小空間が出現します。天井から吊り下げられた箱状のモニターを見上げると、内側の四方の壁を伝うように単語が移動していきます。適切な表現が見つからないのですが、先ほどの空間が「私が立つ地球の中心」だとすると「外側から眺める地球」、と書いておきます。

鑑賞者にとって優しいわけでも優しくないわけでもなく(思えば当然ですが)、作品と自分との関係性を感じることができる展覧会でした。1週間たっても、振り返っては現在進行形で思いを馳せています。

ダムタイプは固定メンバーを持たず、プロジェクトごとに入れ替わるのが特徴です。2022年のプロジェクトでは坂本龍一氏が新メンバーに加わっています。展覧会に行って数日後に訃報のニュースに接し、感慨深いものがありました。