人形町で美味しいものを食べ、南桂子の版画を見に行く。良い休日だ。
「ミュゼ浜口陽三ヤマサコレクション」では、定期的に南桂子(1911‐2004年)の展覧会を開催しており、今年は5月27日から8月6日まで。
南桂子の版画作品には少女、鳥、樹木が繰り返し登場します。その静かで叙情的なタッチは優し気ですが、一方で強い意志を感じます。
早くに両親を亡くしたこと、戦後間もなく、34歳で息子を連れて富山から上京し絵を学んだこと、二人目の夫(浜口陽三)とパリに渡ったこと。そして40歳を過ぎて始めた銅版画で世界的な評価を得るようになったこと。
朝ドラの主人公になってもおかしくないような、ドラマチックな人生を送った人です。どこかをじっと見つめながら佇む少女の姿は作者自身を投影しているのでしょうか。
彼女が築き上げたものは、まさに「王国」という表現が相応しい。王国の扉をそっとノックして、少しだけ覗かせてもらう。また来ます、と心の中でつぶやいてみる。