B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

虫めづる日本の人々|サントリー美術館

真夏の夜に涼しい美術館で虫を愛でてきました。先週は植物、今週は虫。夏だ。

『きりぎりす絵巻』(細見美術館所蔵)は擬人化された虫たちの物語。美しい秋の風景に溶け込んだ、虫顔たちのかわいさよ。細見美術館からは『秋草虫蒔絵螺鈿小箱』も。秋草の上に止まったトンボや蝶、カマキリなどが浮き出ているという手の込んだもの。美意識極まってます。

きりぎりす絵巻は細見美術館ミネアポリス美術館に生き別れの状態なので、いつかまとめて見られると良いと思う。

琳派推しのため、酒井抱一、鈴木其一の名前を見つけると「おっ」となります。其一の『蝶に芍薬図』(板橋区美術館所蔵)は、クロアゲハチョウと芍薬の対比がやわらかく描かれています。クロアゲハチョウは琳派お得意のたらしこみ。抱一は『四季花鳥図巻』(東京国立博物館所蔵)など。

喜多川歌麿出世作として名高い『画本虫撰』(千葉市美術館所蔵)も好きな作品。虫が主題の狂歌に挿絵を付けたという、江戸の粋が満載の本。美人画だけじゃない歌麿の画力と、その才能に目を付けた版元・蔦屋重三郎の眼力が伺えます。

虫撰(むしえらび)、虫聴(むしきき)などの虫を愛でる遊びは、江戸時代に庶民に広がって流行しました。ということは浮世絵の題材になるわけです。虫売りを描いた作品には趣向を凝らした虫籠も登場します。大人たちが虫に熱中する様子はラフカディオ・ハーン小泉八雲)さんもビックリだったそうです。