同時代の人の絵をあまり見ていない気がします。私が古い絵が好きってこともありますが、今は立体やる人、映像やる人、表現方法はたくさんありますもんね。そりゃそうだ。
諏訪敦(すわ あつし、1967~)氏は写実絵画、特に肖像画で有名な作家です。メディアで作品を目にすることもあり、人気のある人なんだなぁ、くらいに思っていました。
今回行こうと思い立ったのは、メインビジュアルにただならぬものを感じたから。これは見ないと後悔するかもしれない。ちょっと遠いけど、府中市美術館は好きな美術館のひとつでもあるし、期待が高まります。
ひとつ目のセクションは作家の父や祖母をテーマした作品群。満州開拓移民の悲劇性だけでなく、家族の死を追体験していくという執念に圧倒されました。大作はもちろんですが、鉛筆のデッサンも驚異。すげぇ。
ふたつ目は静物画のセクション。照明が落とされた部屋に作品が並びます。展覧会タイトルでもある『眼窩裏の火事』という作品もあり、作家が患っている目の前に光状のものが見える、という症状まで描ききっています。実在しないけど、確かに「見えている」光。
最後は舞踏家の故・大野一雄を描いたセクションです。メインビジュアルにも使われている『Mimesis』は2022年の作品。パフォーマー、川口隆夫の踊る姿に重なるように描かれたイメージには、大野の、さらにはそれを描く画家自身も写し出されているようです。
期待以上の展覧会でした。
【写真】府中の森公園