B面のつぶやき

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春陽会誕生100年 それぞれの闘い|東京ステーションギャラリー

春陽会は1922年に発足した美術団体です。翌1923年には第1回春陽展が開催されました。2023年は100周年のメモリアル・イヤーということで、本展覧会が企画されたそうです。

春陽会の理念に『各人主義』があります。ひとつの主義や傾向に偏らず、画家の自由な活動を尊重しよう、ということのようです。理念が示すとおり、個性的な作品を楽しむことができました。

岸田劉生木村荘八クラスの有名人は十数点展示されている一方で、1~数点のみの作家が多数を占めます。初めて知ったけど好きだわぁという発見もありました。あまり見る機会の無い画家の作品に出会えたことが収穫。

洋画だけでなく、挿絵や版画も展示されています。特に挿絵は木村荘八『墨東奇譚』(永井荷風著)、石井鶴三『宮本武蔵』(吉川英治著)、中川一政『人生劇場』(尾崎士郎著)と、手厚い。

石井鶴三の挿絵は、全体的に無骨な感じもありつつ、線は鋭くて緊張感があります。武蔵と小次郎が向かい合っている『円明の巻 1010 魚歌水心(6)』、単純なモノクロの線画だけでふたりの心情が伝わる感じ。

古川龍生の木版画シリーズ『昆虫戯画巻』から、『目次』と『争闘篇 草上飛行』の2点が展示されていました。見た瞬間、好きな感じかも!とピンときました。全10点あるそうなので、いつか全部見てみたい。

先日アーティゾン美術館で良いなと思った作品があり、作者の小杉放菴小杉未醒)は春陽会の主要メンバーであることを知りました。『双馬図』、『母子採果』、『松下人』の3点は、タッチはまったく違うのですが、どれもほがらかな可愛さがあります。アーティゾン美術館で見た『採果童子』と『母子採果』は同時期に描かれていてて、良く似た雰囲気でした。

『採果童子小杉未醒(アーティゾン美術館所蔵)

唯一の女性の作品は、三岸節子の『自画像』。二十歳の彼女が見据える目線の力強さは、後の波乱の人生を表わしているようにも見えます。当時、女性が絵で身を立てるとなると、それはもう、並大抵ではないですから。

今回の展覧会は全国各地の美術館などから作品が集められています。例えば古川龍生は栃木県立美術館小杉放菴小杉放菴記念日光美術館、三岸節子一宮市三岸節子記念美術館。故郷やゆかりのある地域の美術館が力を入れて収集しています。

今回、状態の良い作品を見ることができたのも、こういった地方の美術館のおかげです。こういった活動にもっと注目したい。なるべく訪れるようにしよう。

【写真】記事の内容に全く関係無い、スカイツリーのある風景