B面のつぶやき

美術館、図書館、喫茶店に出没しがちデイズ

エゴン・シーレ展|東京都美術館

2023年上半期、注目の展覧会です。画面を覆う不穏な雰囲気、強烈な筆致、夭折した天才。エゴン・シーレ(1890~1918)のセンセーショナルな人生は映画にもなりました。

ウィーンのレオポルド美術館から50点以上のシーレ作品、およびウィーン分離派の画家たちを紹介する大規模展覧会です。特に『ほおずきの実のある自画像』はレオポルド美術館の、もちろん本展覧会の目玉の作品です。このポーズと目線から感じる自意識過剰さは若さゆえ、でしょうか。

ドローイングも、というか、ドローイングだからこそ、その凄さがよりわかります。鉛筆をチャチャッと動かしだだけなのに。線に無駄や間違いがまったく無いんだろうなと、素人ながら推測します。『頭を下げてひざまずく女』とか、『走る女』とか、これぞシーレ、です。でもポージングさせられたモデルに少し同情もします…。

シーレ以外では、クリムトの『シェーンブルン庭園風景』が新鮮でした。例の黄金時代とは打って変わった作品で、明るい公園の木々と、画面半分を占める水面に映った緑と青空。まるで印象派のよう。コロマン・モーザー、リヒャルト・ゲルストルの作品が見られたのも収穫です。

特に、コロマン・モーザーの『山脈』が良かったです。単純化された山は手前の濃い青緑から薄い青、さらに薄紫、そして黄色味を帯びた薄暗い空に続いています。くすんだトーンの巧みな色使いが落ち着く感じ。ちょっと多色版画っぽい雰囲気もあります。

戦争が終わったのだから、僕は行かねばならない。

僕の絵は世界中の美術館に展示されるだろう。